まぶたの病気、眼瞼下垂(がんけんかすい)の患者と家族を支援している
「NPO法人眼瞼下垂の会」代表の おーばこと 大場美津子です。
今日は、「先天性眼瞼下垂とトレーニング」という話を書きます。
わたしは、みなさんが日々眼瞼下垂でどんなキーワードで検索をするのかを定期的に観測をしています。
数年前にはあまり見当たらなかった「トレーニング」というワードが先天性眼瞼下垂と一緒に検索されています。
検索する人の気持ちになって考えてみますと
先天性眼瞼下垂を「トレーニング」することで改善させたいので、その方法を知りたい。
先天性眼瞼下垂はトレーニングで治る(治ってほしい)。
先天性眼瞼下垂だけれど、手術じゃない方法で、なんとかならないだろうか。
そんな、願いというか 希望を感じます。
先天性眼瞼下垂は、生まれつきまぶたが下がっているのですが
どんな仕組みでまぶたが下がっている(開くことが出来ない)のでしょうか。
先天性眼瞼下垂は、まぶたを開くときに主に使う上眼瞼挙筋が、生まれつき機能しない状態です。
シリーズ・イラストで眼瞼挙筋の働きを知る
片目のみの症状の人もいれば 両目ともの人もいます。
普段は下がっているまぶたが口を開けるときだけ開く(マーカスガン)という人もいます。
眼瞼裂縮小症・眼瞼裂狭小症(BPES)も先天性眼瞼下垂の仲間です。
他に病気があり、その症状のひとつとして眼瞼下垂がある場合もあります。
人によって先天性眼瞼下垂の程度はさまざまです。
上眼瞼挙筋の働きがやや弱い(軽度)程度の人もいれば
上眼瞼挙筋が線維化していて、開く閉じるの動きが制限されている人、
上眼瞼挙筋が見当たらない(欠損している)人もいます。
上眼瞼挙筋の働きがかなり悪くても、それだけで見られないということはありません。
上眼瞼挙筋と並行しているミューラー筋が働いています。
眼輪筋を緊張させると、目を大きく見開くことが出来ます。
前頭筋を緊張させると、おでこにシワを寄せ眉を持ち上げて目を開かせます。
まぶたが下がっていても顎を上げれば 上のほうの視界も広がります。
首を横に傾げたりすることで同じように視野を確保することが出来ます。
生まれたばかりの赤ちゃんでも、無意識にこういった動作をしてものを見ようとします。
怖いのは、成長の過程で 脳のバグによって視力の発達に影響が出ることです。
赤ちゃんは 常にいろんな筋肉を総動員して両目でものを見ようとしていますが
下垂している側の黒目がときどき上に行ってしまうのは、
その瞬間 下垂側の眼が休憩しているということ。
たいていはすぐに戻ってきますが、サボり癖がついてしまうと
下垂している側の眼で脳が「こっちの眼は使わなくてもいい」と判断してしまいます。
それぞれの眼の視力も大切ですが、立体的にものをみるには両眼視が欠かせません。
両眼でものを見るようにするには 下垂している側のまぶたにテープを張る方法もあります。
先天性眼瞼下垂の 現時点でも唯一の治療法は、手術をすること、です。
手術の時期も、早ければ早いほどいい という考えから
思春期、自分の意志で手術がしたいというまではしない という考えまで
とても幅広くあります。
年々、眼瞼下垂の手術をする医師は多くなっています。
しかしながら 乳幼児期の手術を手掛ける医師は、あまり多くはないのが現状です。
おとなの眼瞼下垂手術でしたら、部分麻酔下で行うことができますが
小さいお子さんの手術は全身麻酔でおこなわなくてはなりません。
手術をした後も 定期的なチェックも必要です。
先天性眼瞼下垂の手術の方法は 2つあります。
上眼瞼挙筋という 目を開くためのメインの装置が働かないので
線維化した上眼瞼挙筋を短くしてつなぎ合わせるか、
上眼瞼挙筋とは別のところに「前頭筋に連動してまぶたを開かせる装置」を作るか。
ということで、先天性眼瞼下垂は トレーニングで治る 病気ではありません。
が、広い意味でいうと
先天性眼瞼下垂で生まれた赤ちゃんは、まぶたが開かない状況下でも
無意識にものを見るトレーニングをしている 状態です。
そして、「ものを見る」トレーニングはご家庭でも積極的にしてほしいと思っています。
特に、片方の眼がサボり始めたと感じたならば小児眼科に相談して
両目で見る トレーニングをご検討くださいね。
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2021年10月11日
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