投稿時間:2006/05/27(Sat) 01:38
投稿者名:OMA
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タイトル:診療は主体的に
私どもの形成外科外来には、いろいろな患者さんがいらっしゃいます。普通の眼瞼下垂から、眼瞼痙攣、かなり美容目的に近い皺取り、他院手術後トラブル修正希望まで、様々です。で、ひととおり説明をするのですが、よく耳にする言葉が「私は素人なのでよくわかりません」なのです。「私は眼瞼痙攣で某病院の手術を受けましたが、よく説明もされないうちにこんなにされてしまいました。素人に対しひどいじゃないですか?」「前の手術の内容は分かりますか?」「私は素人なのでよく分かりません」「どのような瞼の形になりたいのですか?」「私は素人なので」、「手術は眼瞼を持ち上げる筋肉を短くし・・・・・宜しいですか?」「私は素人なのでよく分かりません、夫を連れてきます」(中略)「先程奥様に説明したことをもう一度説明しますが・・・・・宜しいですか?」「私も素人なのでよく分かりません。どうしたらよいですか?」・・・診療がストップしてしまい、次の患者さんにご迷惑をかけることも多々あります。悪く言ってしまえば、この「素人」、謙遜の意味ではなく、主体性に欠け、傍観者的、極限すれば、自分で決断することを避ける無責任な逃げとも取れる言葉なのです。私どもにとっては非常に困る言葉です。
手術はよく、船の航海に例えられます。
まず、お客様は、どこまで行きたいか、確実に船長に伝えなくてななりません。この行き先希望の意志疎通が充分でないと悲惨な結果になります。「無事に香港に着きました」とほほえむ船長に「私はハワイの方が良かったのに」とくってかかることになります。もちろん、あとの祭りです。
船旅は、できること、できないこと、いろいろ制約があります。航海にでてから後悔(うまいっ!)してもしかたありません。事前にパンフレットなどで確認すべきです。
もちろん、船旅は100%安全ではありません。不意の嵐にあい沈没するかもしれませんし、海賊にあい、命をおとすこともありえます。こうしたことはありうる、と認識して乗船しなくてはなりません。少しでも不安な点があったならば、船に乗らなければ良いのです(逆に、船長が、この航海は危険だと判断し出航しないこともありえることはご了解下さい)。
もしお客様が船長に未体験の航路(他院で手術を受けて構造が変化してしまっている)を進め、と命じるならば、出たとこ勝負航海、というリスクは覚悟すべきです。お客様はそのリスクを最小限にするために、それ相応の準備をすべきです。例えば、前にうまくいかなかった航海の航海日誌(手術記録や紹介状)があれば、どの辺が危ない海域なのか、新しい船長にもよく分かり、対策を立ててから出航できます。
要するに、結果がもろに自分に返ってくることなので、「素人」傍観者ではなく、自分で決定して欲しいのです。術式の概要を知るのもよいでしょう。しかし、堂々めぐりの質問ばかりでは、船は出航できません。「こうしたい。この方針でいくことに異存はない。リスクは承知した。」との揺るぎない決断が、お客様の方から出ない限り、船長は首を縦ににふることはないのです。